3月10日、イギリスのThe Economistから、
「世界の主な都市の生活物価指数ランキング」が発表されました。
この調査は、一年に2回行われているものですが、
最近は続けて、シンガポールが首位にランキングされています。
ランキング1位という事は、物価が一番高い都市という事ですから、
シンガポールへ移住・企業移転をご計画の皆さまにとっては決して良いニュースではありませんね。
ただ、ちょっとこの調査には個人的にはすごく疑問が多いのです。
本日は、そのあたりを取り上げてみたいと思います。
そもそもシンガポールの物価って、本当にそんな高いのでしょうか?
まずは下記の表をご覧ください。
2015年の9月のニューヨークの生活費指数を100とした場合の各国の指数です。
全ての国をチェックされたい方は、下記のリンクをクリックして下さい(英語です。)
http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2016/03/daily-chart-4
10位までの順位は、前回と変わっていないようです。
シンガポールはスイスのチューリッヒより、生活費指数が高いと報告されていますが、
これって本当に正しいのでしょうか?
シンガポールにいる私にとっては、どうも納得がいかない調査結果であります。
私事でありますが、私は昨年香港に旅行に行きました。
ホテルも、公共の交通費もタクシー代も、すべてシンガポールより高かったです。
高級スーパーから、一般の香港の人が主に利用するであろう下町のスーパーも行きましたが、
どこに行っても、シンガポールより安価なものを見つける事は結構困難でした。
というか、見つけられませんでした。
ロンドンだって、現在ポンド安ではありますが、どう考えてもシンガポールより物価は高いです。
300円とかでどうやってロンドンで食事ができますか?絶対に不可能ですよね。
シンガポールでは、可能です。
忙しい時の私のランチは、ほぼ近所のコーヒーショップのS$4(約320円)ランチ持ち帰りだし…
何を基準とした生活指数なのか?
この調査を実施しているのは、英国の新聞社です。
彼らは一体何を基準として物価指数を図っているのでしょうか?
こちらの表をご覧ください。
*上記のグラフと同様、最新版のはずなのですが、各国の順位が異なっています。
どちらが最新版であるか、確認できましたら、情報を再アップします。
一つ一つ項目を見ていきましょう。
1)1KGのパンの値段
主食という意味での比較と、推測されます。
ただし、シンガポールではパンは米と比べて高価です。
また、一般の家庭では主食はパンではなく、お米の方が圧倒的に多いと思います。
欧米ではパンの価格を基準にするのは納得できますが、
ここでパンの値段で生活費を比べるのには疑問があります。
但し、シンガポールは上位10か国最低の値段ではありますね。
しかも、10年前と比べてわずか50cの値上がりです。
物価の高い都市としてアジアでシンガポール以外にランクインしているのが、ソウルです。
ソウルも米が主食となっていると思います。
パンの値段を見るとなんと、$13.91で10か国中、最高値!
しかも10年前の3倍近くに値上がりしています。
物価の推移を見るのは、興味深い比較表ですが、
各都市の物価水準を比較するのにパンを持ち出すのは、
アジアの国を考慮に入れていない気がします。
できればマクドナルドのセット料金みたいなものを比較してもらえると、
もっと正確さが増すのではないでしょうか?
2)ワイン1本の値段
シンガポールでは、もちろんワインは輸入品です。
ですので、もちろん輸入税が課せられます。
また、シンガポールの酒税は比較的高く設定されています。
しかも、ワインは一般の国民がいつも飲むものではありません。
所謂ぜいたく品のカテゴリーに入ると思います。
方や、欧米ではワインは日常的に飲まれている嗜好品です。
場所によって水やコーラより安く販売しているところだってありますよね。
アルコールを比べるのであれば、
ワインでなくせめてビール(国産)ぐらいにするのが
平均的な価格を割り出すには、適切かと思われます。
3)20本入りのたばこの値段
シンガポールは、たばこ撲滅キャンペーン(?)を行うほど、
たばこに関しては厳格です。
もちろん税率も高率。ソウルと比べると5倍以上の開きがありますね。
そもそも、なぜたばこが生活費の対象になるのかという素直な疑問が沸いてきます。
特に最近は、エグゼクティブとは、あまり縁のない嗜好品ですよね。
4)1Lあたりのガソリン(無鉛)の値段
シンガポールでは、他のアジアの諸国のような交通渋滞を避ける為にも、
一般の車両価格をとても高額に設定しています。
それと同様、ガソリンの値段もあえて高く設定をしています。
車が生活の為の足代わりになっている国々とは、価格設定が全く異なるはずです。
それでも、パリやオスロより安い!
上記4品目のうち、3品目は政府があえて高い税率を課しているものです。
生活費の調査であるならば、
なぜ、公共交通やタクシー代などの比較をしないのでしょうか?
そもそも、この調査自体が、
その国の一般の人たちの生活費の調査ではなく、
欧米人の駐在員向けの調査ではないかと推測されます。
欧米の物差しで、アジアの新興国の生活費を測るって
どこか無理があると思いませんか?
もちろん、住宅やオフィスの費用は世界でも高額な国ではありますが、
それでも、以前「シンガポールの住宅の賃貸相場を各国と比較してお知らせしようと思った所、面白い事を発見しました。」
でお伝えしたように、
ロンドンや香港の方が割高です。
この比較表の中でも、シンガポールが1位になっている項目は一つもありません。
でも、世界で一番物価が高い国って、いったいどういう事なのでしょうか?
全ての情報を鵜呑みにしない事
一体どうして、シンガポールが世界で一番生活費が高い国にランクされてしまったのでしょうか。
私はエコノミストに、一言文句を言いたい気分です。
そしてエコノミストの記事の、表面的なところだけを、
大きく取り上げる日本のマスコミにも、本当にがっかりさせられます。
シンガポールだって、生活の仕方によっては、それほどお金がかかりません。
ただ、外国人の場合は住宅費が大きなネックになってしまうのは、否定できません。
でも、普通の人がチューリッヒで一ヶ月生活してみれば、
絶対にシンガポールの方が、お金がかからない事がわかると思います。
物価が高いという基準が、
その国で生活している人(駐在員ではなく、現地の人)なのか、
それとも、海外勤務手当を十分にもらっている駐在員にとっての物価なのかを、
理解しないとこの手の調査は信憑性に欠けます。
情報が氾濫している現代だからこそ、
それぞれが正しいことを判断する目を持つことが大事だと思います。
シンガポールは、アジアの中では物価の安い国ではありませんが、
生活していく上で、すべてのものが高くて大変!
と感じる国ではありませんので、みなさんご安心下さい。
当社ではシンガポールヘ進出される企業の皆様、
また移住をお考えの皆様のサポートをさせて頂いております。
当地での移住をご検討中の方は、
シンガポール移住サーポートのページを
そして、会社設立等については、
も併せてご覧下さい!