シンガポールに会社設立を計画中。
独自で情報を集めようと、インターネットで色々なホームページを
見ているうちに混乱してきて、収集がつかなくなってきた!
今回はそんなあなたの為に、
シンガポール会社設立の正しい手順を、分かり易くご説明いたします。
今回のテーマは、少し長くなります。
外国人(外国企業)がシンガポールで事業を行う為には、どんな形態が最適なのでしょうか?
シンガポールの事業形態
法人設立の手順をご説明させて頂く前に、
少しだけ、シンガポールでの会社形態についてご紹介させて頂きます。
シンガポールで外国人(外国企業)が事業を行う場合、
法人を設立するのが一般的ですが、
それ以外にはどんな事業形態があるのでしょうか?
以下、事業形態の名称とそれぞれの特徴をあげておきます。
1.支店 (Branch):
支店とは、本社・本店から離れた地域において、
本店同様の営業活動を行う為のオフィスの事を指します。
支店は本社の一部で、独立した事業体ではありません。
支店の登記はシンガポールにて行いますが、
日本に本社がある場合、法人税の計算は本店の利益として計算されるため、
日本の実行税率で課税されます。
支店として設立した会社は、シンガポールの税率の恩恵を受ける事はできないという事です。
2. 駐在員事務所:
シンガポールに設立した駐在員事務所の業務は、
シンガポール国内および周辺諸国の市場調査に限定されています。
営業活動は、一切行う事はできません。
メンテナンスやサポート業務も同様に禁止されています。
金銭が絡まないからと言って、
宣伝行為を行うのも違法ですから注意して下さい。
3.現地法人 (Limited Company):
海外の企業がシンガポールに進出する際に一番多いのが、
現地法人を設立して、当地にて事業を行うパターンです。
シンガポールでは、外資100%、外国人のみの取締役で法人設立が可能です。
現地法人(Limited Company)には、
公開会社と非公開(Private)会社があります。
シンガポールでよく目にする、社名の後のPTE.LTD.は
Private Limitedの省略になります。
4. 個人事業体 (Sole Proprietorship)
シンガポールで個人事業主になりたいという、
ご相談を日本人のお客様から良く頂きます。
日本国籍の方が外国で個人として事業を行うのは、
日本で個人事業主として、
事業を行う場合とかなり事情が異なります。
4から7までの事業体で、外国人が事業を行う場合は、
必ず現地の代表者を定める事が規定されており、
たとえ、個人事業体でも、
シンガポールに正式な住所を持たない外国人は、
単独で事業を行う事はできません。
これらの事業体をご自身で設立し、就労許可を申請しても、
確実に取得できる確証がないので、
ACRAの方でも、予めMOMへチェックすることを推奨しています。
5. パートナーシップ (Partnership)
法律事務所等に多い、パートナーシップの形態です。
4同様、会社=個人なので、会社の負債は全て個人の負債となります。
6. 有限責任パートナーシップ (Limited Liability Partnership)
4番と5番が個人の無限責任であるのに対して、
LLPは有限責任のパートナーシップとなります。
7.Limites Partnership
通常のパートナーシップの場合は、
全てのパートナーがジェネラルパートナーで構成されますが、
このLimites Partnershipの場合は、
最低一人のジェネラルパートナーと、
一人以上の有限責任パートナーから構成されるます。
シンガポールに永住権を持たない外国人が事業を行う場合、
現実的には、1から3の形態での運営がほとんどです。
また、当地で起業される方の場合は3番の法人を当地で設立し、
その法人を通して、就労許可を申請する事になります。
法人設立の手順について説明いたします
前置きが長くなりましたが、
いよいよシンガポールにおける
法人設立の手順についてご説明させて頂きます。
STEP1:会社名を予約する
会社設立(法人設立)を行う場合、
まず始めに行わなければいけない事は、会社名(法人名)の決定です。
次に、その希望する法人名がシンガポールで登記が可能なのかを調べます。
使用が可能とわかった場合は、
その法人名をACRA(会計企業規制庁:Accounting & Corporate Regulatory Authority)
に予約します。
シンガポールに登記する法人名には、最後にPTE. LTD. あるいは、LTD.が付きます。
PTE. LTD.とは、Private Limitedの略で、
非公開会社である有限責任株式会社のことです。LTD.は公開会社です。
STEP2:登記に必要な情報や書類の整備
社名(商号)が決まり、ACRAーAccounting and Corporate Regulatory Authority (会計企業規制庁)への予約を済ませたら、登記に必要な書類や情報の取得にかかります。
もちろんこれらは、社名予約の前に行うことも可能です。
必要な情報は、以下の通りです。
1) 会社の事業内容
登記簿には、通常二つの主な事業内容が記載されます。
定款には、「すべてのサービスを行う事が出来る」と記載されます。
日本のように後から、事業内容を定款に追加する必要はありません。
*ライセンス取得が必要な業種に関しては、法人登記後必要ライセンスを取得します。
2)取締役の詳細と株主の詳細
それぞれの氏名と連絡先(住所、電話番号、Eメールアドレス)が必要です。
3)資本金の金額
法人登記の際、資本金は1シンガポールドルからでも可能ですが、
銀行口座開設や就労許可取得の事を考えると、
予めある程度の資本金額を設定しておくことをお勧めいたします。
必要な書類は、株主、取締役の身分証明書。
また海外に居住する取締役の場合は、
住所を証明できる書類の提出も必要となります。
申請は、オンラインにて行いますので、
必要書類はこの時点では原本を提出して頂く必要はございません。
*ご注意!
シンガポールにおいて、法人登記の業務を行うACRAからの規則が年々厳しくなっており、
登記の前に、取締役の住所を確認する英文の書類、
および宣誓書への署名が必要となっています。
日本在住の方が取締役になる場合は、
英文への翻訳や宣誓書の認証手続きが必要となりますので、
余裕を持って、予定を立てる事をお勧めします。
取締役について
シンガポールでは、
外国人1人だけでも会社設立(法人設立)する事が可能です。
但し最低一人の取締役は、
登記の際にシンガポールに居住している必要があります。
そのためシンガポールに法人を登記する多くの企業は、
現地の会計事務所や法律事務所、会社設立代行業者などに、
暫定の取締役を依頼するのが普通です。
STEP3:定款の作成と会社登録申請
STEP2の情報を基にして定款を作成します。
通常定款の作成は秘書役が行います。
取締役と株主が定款に署名。
その後、ACRAに法人登記の申請をします。
登記の申請は全てオンラインで行われ、
通常の会社であれば、24時間以内に作業は完了します。
秘書役とは?
当地でカンパニー・セクレタリーと呼ばれている、役職です。
会社の登記簿、定款、取締役会、株主総会議事録等の書類の作成および保管を行います。
法人設立後6か月以内に秘書役の任命をしなければいけないことが、
会社法によって定められています。
社内から秘書役を選ぶこともできますが、
法人設立時から設立代行業者、会計・法律事務所などが
秘書役に就任している場合がほとんどです。
小規模な法人の場合は、ACRAなどに提出する書類の作成等もありますので、
外部の専門家を秘書役として選出することをお勧めいたします。
STEP4:法人銀行口座の開設
法人登記が完了したら、次は法人の銀行口座の開設です。
取締役が海外在住の場合、登記までのプロセスでは、
シンガポールへの渡航の必要はありません。
しかし、銀行口座開設の際は銀行の担当者の前で必要書類に署名が必要な為、
シンガポールへの渡航が不可欠となります。
口座が開設されましたら、資本金の入金を行います。
最近では、シンガポールの地元の銀行で法人口座開設の際には、
様々な資料や情報の提出を要求されます。
予め準備をしておきましょう。
口座の開設の許可が下り、実際に口座が使えるようになるまでには、
最低でも、申し込みから1週間ほどかかります。
銀行によっては、それ以上の日数がかかる場合もありますので、
余裕を持って計画されることを、オススメします。
STEP 5 : 就労ビザ(EP)申請と取得
就労ビザの申請にかかります。就労ビザ申請の為には、ある程度まとまった資本金が必要となります。
登記の際にS$1で法人を設立した場合は、
就労許可申請の前に増資を行い、
増資額を、登記簿に反映させます。
就労許可取得の為の資本金額は、10万シンガポールドル程度を目安と考えてください。
また就労許可取得に際しては、給与額や申請者の学歴なども判断材料となります。
就労ビザの取得 (EPの取得)
現在就労許可は全て、オンラインを通じて申請となります。
通常であれば、2週間ほどで結果が出ますが、
最近は、MOMの審査が厳しくなっており、
追加書類の提出を求められる場合が多くなってきています。
就労許可が下りましたら、MOM(Ministry of Manpower:労働省)に予約を入れ、
指定された日時に、写真撮影と指紋押捺に行きます。
その後、1週間程で就労許可(EP)が指定の住所に郵送されてきます。
MOMに予約を入れる際には、シンガポールに入国している必要があります。
シンガポールへの渡航予定には、MOMの予約日を考慮にいてておくことをお勧めします。
STEP 6 : その他
株主が法人で且つ、ACRAが定めた条件に合致する会社は、
登記後3か月以内に、会計監査役を設定しなければいけません。
また、GSTの登録が必要な企業は、早めに登録しておきましょう。
自力で法人設立をする?それとも専門家に依頼する?
東南アジアの国々の中には、
法人登記のプロセスがとても煩雑で不透明な国々が多いですが、
シンガポールでの、法人設立のプロセスはとてもシンプルです。
法人設立の際、できるだけ無駄に出費を省きたいという方は、
ACRAのサイト等を参考に、
ご自身でできる事、設立会社や会計士事務所に頼むことを
リストアップしてみてはいかがでしょうか?
ACRAのサイト(英語)Setting Up in Singapore
但し、ここで少しばかりの金銭を節約して、多大な時間を費やすよりは、
全てを専門家に依頼して、
ご自身は新しく設立する、
シンガポール法人のビジネスプランに注力する事をお勧めいたします。
法人設立を専門家に依頼したときの費用の概算
法人登記に関わる費用に関して、特に決まった価格はありません。
一般的にシンガポールのローカルサポート会社や
ローカル会計士事務所等の費用は安めですが、
詳しい説明等はそれほどしてくれません。
もちろん、全て英語での作業となります。
また、就労許可取得に関してのノウハウを
あまり持っていないところが多いようです。
ローカルよりは、多少費用がかかってしまいますが、
やはり日系の業者や会計士事務所がお勧めです。
下記に、シンガポールにある日系の一般的なサポート費用を記載しておきます。
但し、サービスの内容は業者によってまちまちですので、
あくまでもご参考程度に留めておいてください。
1. 法人登記費用:$2,000から$6,000(一式)
法人口座開設費などを含んでパッケージとして提供している業者と、法人登記に関しては登記のみの費用として提示しているところがあります。
2. 暫定取締役費用:$2,000から$3,500(年間)
月間で受け付けてくれるところと、年間のみの契約となる業者があります。
3. 会社秘書役費用:$900から2,000(1年間)
秘書役の一般的な業務を含んだ請求額と、業務は別途の場合があります。
4. 就労ビザ申請費用:$900から$2,000
MOMへの申請料金およびビザの費用が含まれる会社とそうでない会社があります。
申請のみなのか、MOMへ同行して取得までをすべてサポートしてくれるのか、
業者によって異なります。
その他、法人銀行口座の開設費用等は法人登記に含まれている場合と、
別途請求の場合があります。
このように、業者によって、サービス内容や価格設定はまちまちです。
特にサービス内容については、個々の業者に詳しく問い合わせをする事をお勧めいたします。
最後に…
さて、シンガポールでの法人設立の概要はお分かりいただけましたか?
法人登記の方法は、とてもシンプルです。ACRAのサイトを確認すれば、
ほとんどの情報を入手する事が出来ます。
ただ前述したように、ここで少しばかり節約をして時間を費やすよりは、
きちんとした業者に一括で依頼してしまい、
ご自身は、もっとビジネスの売り上げに直結する事に時間を割くことの方が重要だと思います。
「会社の売り上げに貢献することに時間を費やすこと。
売り上げに直結しない事は、極力外注する。」
ビジネスの基本ですね。
ただし、中にはいい加減な業者もおりますので、不具合を避ける為にも、
法人設立に関する最低限のプロセスは、ご自身で把握しておくことは大切だと思います。
シンガポールの法人設立に関しては、下記のブログも併せてご覧ください。
▶ シンガポールに法人を登記する事のメリット
▶ シンガポールに法人を登記する事のメリット・デメリット:まずはデメリットから。