相続税回避の為の海外移住は法律改正で本当に減少するのでしょうか。

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高齢化と人口減少のダブルパンチで、日本の財政は危機を迎えています。
財源を求めて、国税庁の海外資産チェックが年々厳しくなっています。

今回は海外在住の日本人への課税、
特に相続税に焦点を当ててお話しさせて頂きます。

 

国外移住は相続税逃れの為?

2017年の税制改正では、国外に居住している日本人の海外資産および、
相続税の免税に関する法律を,見直す見通しが強くなってきました。

日本の相続税は、ご存知のように世界でも高税率です。

 

日本の相続税については、こんなブログも書いています。
▶ 日本の相続税は本当に高額なのだろうかー世界の相続税と比べてみた!

 

そんな、高税率である相続税の支払いができずに、
代々継承してきた不動産を
切り売りしなければいけないというような現象も、
しばしば起きています。

 

この相続税の支払い回避するため、
海外へ移住するというケースもあります。

一番マスコミを騒がせたのは、
武富士の元会長とその息子さんの専務の件ですね。

 

この事件に関しては、色々マスコミで取り上げられましたが、
最終的には武富士側の勝訴となりました。

日本経済新聞電子版、2011年2月:
武富士元専務への課税取り消し 2000億円還付へ
最高裁判決

 

 

海外資産に対する、日本の政府の対応の変化

武富士の財産贈与が、行われた当時の相続税法では、
海外に居住する日本人が海外の財産を贈与、
または、相続で取得した場合は課税対象外となり、
贈与税や相続税は課されないものとなっていました。

ただ、この事件の影響からか、
2000年には、贈与する側か受ける側のいずれかが
過去5年以内に日本に住んでいれば、
海外資産も課税対象となるように税制が改正されました。

武富士事件が起こる以前は、
相続・贈与税逃れの為にわざわざ海外に住居を移すという事を
前提に法律が制定されていなかったのだと思います。

*長男である専務が香港に移住したのは、1997年です。

 

非居住者の相続税に関する税制の変遷

ここで非課税扱いとなる、
相続税や贈与税についての、税制の変遷をまとめてみます。

 

1)2001年以前
日本に非居住となる日本人の保有する海外の資産については非課税。
相続税に関しても、相続人と被相続人が非居住者だった場合は非課税。

以前から、ある一定の期間外国に住んでいなければならないという義務はなく、
相続・贈与を受ける時点で、非居住者であればよかったのです。

 

2)2001年から
相続人と被相続人が海外に5年以上居住している場合のみ、
海外の資産については非課税。

外国籍の国外居住者は、以前同様非課税。

 

3)2013年から
外国籍であっても、贈与を受ける時点からさかのぼって、
5年以内に日本国内に居住していた場合は課税対象と税制を変更。

 

4)2017年から
5年の期間を10年に変更
2)から3)にルールが変更された理由が分かりますか?

非居住者であっても、条件によっては国外財産が課税される事となった為、
子や孫に外国籍を取得させることにより、
「国外財産」を非課税で贈与・相続させる事例が出てきた為です。

 

このルール変更で、とばっちりを受けたのが、
ビジネス等の理由により日本に居住している外国人たちです。

 

近年、大手企業では
外国人のCEOを迎え入れる機会も多くなってきています。

海外からの富裕層が
日本での相続・贈与税支払いの義務を恐れて
日本に居住する事を避けてしまう恐れも生じています。

 

今回検討中の改正案は、
日本人の相続税逃れ封じ込めというよりは、
相続・贈与税が発生する恐れのある、
外国人富裕層の為のルール変更という意味合いが、
強いのではないかと感じるのは、私だけでしょうか?

 

相続税や贈与税以外にも、
日本の居住者が保有する海外資産に課せられる税金、
及び国外提出の際の課税制度(出国税)などもあります。

これらに関しては、別の機会にご説明させて頂きます。

 

 

海外に移住した、企業オーナーたち

下記に相続税対策、
あるいは法人税対策として企業を日本から海外に移転させたり、
海外移住をしてしまった、
主な企業のオーナー達をピックアップしてみました。

HOYAの鈴木氏が、シンガポールに住居を移したときは、
当地では結構話題になりました。

ドン・キホーテの安田氏は、
出国税が施行される直前の海外移住です。

相続税逃れの移住と、マスコミでは取り上げていますが、
実際のところは、ご本人に確認しないとわかりません。

 

金田博夫氏 (サンスター会長)
移住先:スイス
サンスターは、本社機能の一部を2007年にスイスに移転。

また、日本での上場も同年廃止しています。
本社機能も2009年には、完全にスイスに移設。
子会社である、
サンスター技研も2005年にシンガポール移転しています。

 

福武總一郎氏 (ベネッセホールディングス会長)
2009年、ニュージーランドに移住。

 

鈴木洋氏 (HOYA株式会社CEO)
2012年、シンガポールに移住。

 

安田隆夫氏(株式会社ドン・キホーテホールディングス最高顧問)
2015年 シンガポールに移住。

 

海外から、シンガポールに移住してきた著名人に関しては、
▶ シンガポールに移住した海外の著名人
も、併せてご覧ください。

 

 

税制改正によって、本当に節税目的の移住は減るのでしょうか?

もし来年度、計画通り税制が改正され、
5年ルールが10年になった場合、
本当に、節税目的の移住者は減るのでしょうか。

 

11月14日の日経ビジネス電子版で福武總一郎氏は、
インタビューに答えて、こんなことを言っています。

 

今、ニュージーランドに住んでいますね。租税回避のためでしょうか。

福武氏:みんな節税のためだとか言うけど、そんな気は全然ない。最初はハワイに行きたかったけれど、ハワイに行くとボケると思った。バンクーバーやシドニーも考えたけど、最終的に、自然が好きなのでニュージーランドになった。

海外に5年を超えて住んでいる日本人にも相続税を課すという検討も始まっているようです。

福武氏:もしそうなったら、(ニュージーランドの)国籍を取るから、関係ないよ。日本への未練は全くない。日本は大好きだよ。本当に大好き。しかし、経済のことばかり考える政治家や経営者がこの国をダメにしている。この国にはもう、将来ないよ。だから、地方から反抗しようと思って、(現代アートの振興を支援する)直島の事業をしているのです。

迷走ベネッセ創業家・福武氏がついに口を開いたー福武總一郎氏が語る事業継承の本音

 

 

100%本音かどうかはわかりませんが、
後半のフレーズが海外移住を決断した多くの
オーナーの意見を反映しているのではないでしょうか。

国籍を取るから、関係ないよ。日本への未練は全くない。日本は大好きだよ。本当に大好き。しかし、経済のことばかり考える政治家や経営者がこの国をダメにしている。この国にはもう、将来ないよ。

 

実際、ドン・キホーテの安田氏も国籍取得を匂わせているようですし…

 

 

また、少し古いですが、週間現代の2013年の記事からの抜粋もご覧ください。

日本有数の資産家であるイエローハット創業者の鍵山秀三郎氏は、こうした政府の態度に憤る。

「国に税として取られても、それが社会にどう生かされるかわからないことが増えています。だからみな、相続税を払いたくないと思ってしまう。もし相続税が増税されれば、取れないから増税しようという政府の魂胆が透けて見えるため、さらに人々は納税から逃げていくでしょう。

そもそも個人が築いた資産は自分の子孫だけでなく、社会や後世のために使うべきだというのが私の考え方です。相続税を重税化することは一時的な財政再建には役立つかもしれませんが、人々の公共意識を壊すことにもなりかねない。私はそう危惧しています」

 

 

ちなみに、世界一税金が高い国とされるスウェーデンは相続税を廃止しました。

 

 

自分たちが犯してきた間違いを修正せずに、
「取りやすいところから取る」という考えに固執していると、
多くの優秀な経営者たちに、愛想をつかされてしまうような気がします。


当社ではシンガポールヘ進出される企業の皆様、

また移住をお考えの皆様のサポートをさせて頂いております。

 

当地での移住をご検討中の方は、

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