日本の相続税は本当に高額なのだろうかー世界の相続税と比べてみた!

souzokuzei

先日、日経の電子版に以下の記事が載っていました。

相続税の対象者1.7倍 非課税枠4割減で

2015年1月の税制改正によって、首都圏で相続税の課税対象者が増税前の1.7倍に増えていることが分かった。相続する財産総額の非課税枠が4割減ったためだ。

税制改正前に、色々と相続税対策をされた方も多いと思いますが、
それでも、やはり課税対象者は1.7倍にも増えたのですね。

私の中には、シンガポールと比べると、
日本の高額所得者の方々は,
本当にいつもどうしたら節税ができるのかをいつも考えているイメージがあります。

やはり日本って、高額の税金に悩んでいる方が多いのでしょうか?

本日は、相続税について少し調べてみたいと思います。

目次

日本の相続税の歴史

最初に日本に相続税が導入されたのは、1905年(明治38年)。
日露戦争の戦費調達の為と言われています。

現行の相続税・贈与税の元になっているのが、
第二次世界大戦後の1951年の税制改革時に導入された税制です。
当時の目的は、アメリカによる日本の財閥解体。
富の集中を防ぐため、最高税率を高くするように要請されました。

当時(1950年、昭和25年)の最高税制は、なんと90%!
しかも、20万円でも、25%が課税されています。

相続税Untitled

ー税大ジャーナル 相続税100年の軌跡より

当時の20万円は、現在の1,000万ぐらいの価値があったと思いますが、
*当時の大卒の初任給は、8,900円ぐらいだったそうです。
それでも、やはりとんでもなく高い税率です。
もし、資産が5,000万以上あったら、
絶対に、死ぬ前にすべて使いたくなりますね!

ただ、この税率はそれほど長く続きません。
2年後の、1952年(昭和27年)に税制は改正され、
最高税率と、その税率が課せられる金額は、
それぞれ70%と1億円に変更になりました。

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ー税大ジャーナル 相続税100年の軌跡より

1958年(昭和33年)には遺産取得税方式から、
現行の法定相続分課税方式による相続の都度の遺産取得税方式に改正されます。

そして、2003年(平成15年)の税改正で最高税率が、50%に引下げられました。
また、相続時精算課税の制度が導入され、生前贈与が容易になったのがこの時期です。

徐々に引き下げられてきた相続税ですが、2015年に最高税率が55%に引き上げられ、
更に基礎控除額が40%減少。
ここで、冒頭の記事のような現象が起きたわけです。

ここまでを、簡単にまとめてみます。

戦後、相続税は90%という驚くべき税率だった。
しかしそれは長く続かず、その後徐々に税率現象の道をたどって行った。
が、2015年にふたたび税率が上昇。しかも控除額が大幅に減少。

さて、この最高55%という税率、
そして控除額は世界的に見てどうなのでしょう。

次は世界の様子を見てみましょう。

海外の相続税は、いったいどんなことになっているのでしょう。

アメリカの場合

相続税(アメリカの場合は、遺産税)がはじめに制定されたのは、1862年。
目的は、南北戦争前の戦費調達の為を言われています。

制定された目的が日本のものと同じというのはちょっと面白いです。
あるいは、日本がアメリカを見習ったのかもしれません。

この遺産税、ブッシュ政権(2010年)時には一度廃止されていますが、
2011年に、基礎控除500万USドル、最高税率35%で復活。
2016年度の最高税率は40%ですが、
基礎控除額が大きい為(545万USドル:日本円で約5億4700万円)
殆どのアメリカ人には、縁のないものとなっています。

アメリカの相続税(ウィキペディア英語版)

イギリスの場合

お次はイギリスです。
イギリスの相続税ができたのは、1796年 。

当初の名称はDeath duty。その後、Transfer tax (1975年)
そして、現在のinheritance Tax (1986年)となりました。

イギリスの相続税に関する課税は、
他の多くの国々とは異なり一律です。
税率は40%。

アメリカほどではないですが、基礎控除額が32万5千ポンド(日本円で約4,300万円)分、
設けられています。
また、アメリカ同様配偶者は免税となっています。

イギリスの相続税(英語)

相続税が占める割合と負担率

ここで、世界の相続税が、その国家全体の税収入に対する割合を見ていきます。

税収税収のうち相続税の占める割合

フランスと日本、他の国より割合が他と比べるとかなり多いのがわかります。

次に日本の財務省のサイトから、「主要国の相続税負担率のグラフ」です。主要国相続税負担率

配偶者控除がない事、そして最低課税額が他の国より低い事を考えると、
やはり日本の相続税率は高くて、
多くの人が負担しなければいけない税金だという事がわかります。

相続税のない国は?

ここまでは、各国の相続税を比較してきましたが、
世界の中には、相続税のない国も多く存在します。

先進国で、相続税が無い国は下記の通りです。

シンガポール:2008年に廃止
香港:2006年に廃止
スエーデン:2004年に廃止
ニュージーランド:1992年に廃止

その他、イタリア、カナダ、オーストラリア、スイス(一部)にも
相続税はありません。

こうしてみていくと、
日本の相続税率のアップや最低課税額の引き下げは、
世界の潮流に逆行していると言えますね。

先行き不透明な日本。
やはりこれからも、海外移住は盛んになるのではないでしょうか。

最後に、もう少し全体的な事をビジュアル的見てみたい方には、
日経の世界の相続税事情は?「増税ニッポン」と比較のデータ
見やすく分かり易いので、お勧めです。

*何故か削除されてしまっています。
特に削除する必要はないと思うのですが…

最後に

少子化による人口の減少などから、日本の税収の伸びはあまり期待できません。
また、法人税引き下げは企業を活性化するためにも必須の政策の模様。
そうなると、新たな相続税の増税や制度の見直しの可能性もあり得ます。

日本とシンガポールでは、所得税や相続税、
多くの税率が大幅に異なるため、
理解するのがなかなか難しいですね。

シンガポールの税金については、下記のブログも併せてご覧ください。
▶ シンガポールと日本の税制を比べてみる
▶ シンガポールの個人所得税の税率と控除について

souzokuzei

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