CRS(共通報告基準)実行されると、シンガポールにある口座はどうなるの?

Common Reporting Standard

本日の話題は2017年1月から、
日本やシンガポールで施行された、
CRS(Common Reporting Standard )についてです。

目次

CRSとは?

そもそも、CRSって一体何?という方のために、
簡単にCRSについてご説明させて頂きます。

CRSはCommon Reporting Standard の頭文字を取ったもので、
日本語では、そのまま訳して、共通報告基準と呼ばれているようです。
ただ、あまり一般の人には馴染みの無い言葉ですね。

CRSはOECD(経済協力開発機構)が定めた基準です。
OECDは2014年7月21日、G20参加国の要請を受け、
「課税における自動的な情報交換に関する基準 」
Standard for Automatic Exchange of Financial Account Information in Tax Matters)公表しました。
基準を設けた目的は、国際的なマネーロンダリングを防止する事にあります。

この基準の中にModel Competent Authority Agreementと並んで、
示されているのが、CRSです。

CRSが定められたことにより、CRSに参加している国の金融機関は、
非居住の口座保有者に対して、
居住国の住所と納税者番号の提出を義務付けを実施。
口座保有者の情報を居住国側が把握出来る事になりました。

シンガポールの場合、
今まではたとえ非居住者であっても、
パスポートだけで銀行口座の開設ができました。

しかしCRS実施後、
シンガポールに非居住の口座開設希望者は全員、
居住先の住所を証明出来るものを、
金融機関に提出しなければいけなくなりました。

また、納税者番号の提出も求められるので、
日本人の場合はマイナンバーを申告する必要もあります。

CRSが制定された背景について

国際的な企業や個人の資産家が、非課税や税金の低い国に口座を開設。
本来は居住国で支払わなければならない税金を回避していることが、
度々国際会議等で問題視されてきました。

多くの税収入の機会を逃していた国々は、
なんとかしてこのような状況を改善しようと解決策を探っていたのです。

アメリカと日本の場合

はじめに動いたのは、米国です。
米国では、納税回避を目的とし、無申告で米国以外の金融機関の利用を防止するためFATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)を2010年に制定、
2013年から施行しています。

これによって、米国民(アメリカの納税は属国主義なので、世界中どこにいても国籍がある限り、米国に納税する義務があります)及び、
グリーンカードを保有する全ての人、
そして米国に登記された法人の米国以外の口座は全て
米国のIRSに申告する義務が生じました。

シンガポール国内の金融機関は、2015年から米国の指示を受け、
この時期一斉に外国人口座保有者全員に

  • 米国国籍、あるいはグリーンカードの保持者ではない事
  • 米国に金融の口座を保有していない事

という書類にサインをして、銀行に提出することを義務付けました。

今回のCRS実施時と異なるのは、
シンガポール在住の外国人で、国内の銀行口座保有者(シンガポールに設立された法人も含む)全てに誓約書の提出義務を課した事です。

米国とは全く縁が無くても、外国人でシンガポールに住んでいる、
あるいはシンガポールに法人があると言う理由だけで、
「私はアメリカ合衆国国民ではありません」と宣言しなければいけないのですから、
米国から、いかに強い指示が出ていたかが分かりますね。

日本でも、海外への資産フライトに関して規制が数年前から始まっています。
2014年(2013年度分の確定申告時)に、海外に5,000万円以上の資産を保有している場合は、確定申告の際に「国外財産調書」と「国外財産調書の合計表」を貼付の義務を課しています。

しかし、アメリカと異なりこちらはあくまでも自己申告。
現実問題として、
中々その実態を把握することは今まで難しかったはずです。

実際、シンガポールにある金融機関のプライベート・バンキングセクションにお金を預けている人で、日本に申告していない人は相当数にのぼります。

CRS導入後の日本とシンガポール

さて、このCRS導入後日本とシンガポールの金融機関はどのような措置を取ることになるのでしょうか。

日本の大手銀行のホームページに、CRSについての記載がありました。

三井住友銀行のホームページより

CRSは、外国の金融機関に保有する口座を利用した国際的な租税回避を防止するために、経済協力開発機構(OECD)が策定した、金融口座情報を自動交換する制度です。

現在、日本を含む100以上の国・地域がCRSに参加し、参加各国に所在する金融機関は、管理する金融口座から税務上の非居住者を特定し、当該口座情報を自国の税務当局に報告する必要があります。報告された情報は、各国の税務当局間で相互に共有されます。CRSは、参加各国の国内法に組み込まれ、現地法令として適用されます。

日本においては、国税庁が「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(実特法)」を改正し、CRSを導入しました。

2017年1月1日より施行され、弊行を含めまして日本の金融機関は、実特法に基づき、新たに口座開設等を行うお客さまの、税務上の居住地を記載した届出書のご提出をお願いさせて頂く場合がございます。お客さまの税務上の居住地に日本以外の居住地があり、その居住地が報告対象国である場合、お客様の口座情報等を年1回、弊行より国税庁に報告することが義務付けられております。

ここで気をつけなければいけないのは、”税務上の居住地”と言う表現です。
もし、海外に法人を持っていてその法人が”税務上の居住地”であった場合で、
かつその国がCRS実施国であれば、
法人口座の情報も日本の国税に報告される可能性もあるという事です。

約100カ国がCRSの導入を決定しており、
その内56カ国が早期適用国
(2017年から税務当局間で情報交換が開始される国)となっています。

日本とシンガポールは共に2018年からの実行が予定されています。
CRSが実際に実行されると、
日本とシンガポール間で情報を自由に交換することが出来るようになります。

CRSの導入決定国と適用開始時期については、OECDの資料をご覧ください。

実施されると、実際にはどんなことが起こるのでしょう?

シンガポールには皆さんもご承知のように、
多くの非居住の外国人が口座を開設しています。

その中には、きっとCRSが実施されると
困った状況に陥るものも含まれているでしょう。

シンガポールで営業をしている、
ある銀行のプレミアセクションの日本人顧客は約3,000人だそうです。

CRS実施に先駆けて、口座保有者にマイナンバーの提示を求めたところ、
マイナンバーの提示を拒否して、
かなりの数の口座保有者が口座を閉めてしまったそうです。

1つの銀行のプレミアセクションだけで、3000人の日本人口座があるのだとしたら、
少なくとも、1万人以上の日本人口座保有者が
シンガポールには存在する可能性は非常に高いです。

その1万人の口座を
一々日本の税務署や国税がチェックするとは考えられません。

既に怪しいとめぼしを付けている人の口座へ、
チェックが入るのではないでしょうか?

しばらくは、動向を観察する必要がありそうですね。

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