シンガポールの教育制度と、教育レベルについて

singapore education system

今回は、税制や法人登記のお話からは少し外れ, シンガポールの教育制度についてお話をさせて頂きます。

上の表はシンガポールMOE(Ministry of Education, Singapore)からお借りしてきました。

まずはシンガポールの教育制度のご紹介から。

シンガポールの教育制度は、イギリスの植民地時代の影響を大きく受けており、
各学年の分け方や呼称も、イギリスの制度と同様なものが多く見受けられます。

しかし、教育システム自体においては独自のシステムをとっています。
そのシステムの下、世界でも有数の高水準の教育を国民に提供しています。

幼稚園から始まって、次に日本の小学校にあたるPrimaryが6年。
当地では、P1,P2という呼び方をします。
更に、日本でいう中学校。Secondaryが4年から5年。
ここまでがBasic education。
日本では、義務教育の期間ですね。

但し、シンガポールの義務教育はPrimaryまで。
しかも、義務教育の制度ができたのが、2003年というから驚きです。

だからと言って、シンガポールの教育レベルが低いかというと全く反対で、
世界でもトップクラスの教育レベルの国であります。

Secondaryの次は高校ではなく、
Post Secondaryへの進学となります。(Secondaryの次の学校という意味です)
就学期間は1年から6年。
Post Secondaryの中には、
高等専門学校、ジュニア・カレッジ等々の様々な種類の教育機関があります。

日本と違って、かなり複雑ですね。
下記の表を見て頂くともう少しわかりやすいかもしれません。

ただこの表だと、大学もPost Secondaryにカテゴライズされている。
この辺がとってもシンガポールのファジーなところでございます。

singapore education system2

exam

←のマークは試験のマークです。
小学校を卒業するときにPSLEという試験があり、ここで普通の中学校へ進んで大学進学の道を歩むのか、それとも、技術系の学校へ行くのかが決定します。

PSLEに関しては、英語ですがWIKIに詳しい説明があります。

Primary School Leaving Examination
The Primary School Leaving Examination (PSLE) is a national examination in Singapore administered by the Ministry of Education and taken by all students near the end of their sixth year in primary school before they move on to secondary school.
Wikipedia

図でも示されているように、一応技術系の学校から大学へ進学というのも不可能ではないのですが、その為には複雑な進路と他のコースより長い年月が必要になります。

やはり、大学を目指すのであれば、PSLEで良い成績を収める必要があります。
なので、このPSLEのテストでよい点数を獲得するため、
みんな必死になって勉強をするのです。
親御さんの期待も、半端ではありません。

この制度は、勉強ができる子供は、上位を目指しなさい。
そうではない子は、早く社会に出て働きなさい。
というような制度とも言えなくもないですね。

但し、猫も杓子も大学へ行けてしまうような制度と比較すると、
早い時期から技術系の学習を習得し、
社会に出る準備をする方が良い気もします。

先進国では、ドイツなども早くから職業訓練校に進む子供たちと、
大学進学コースに進む子供たちに分かれます。

目次

シンガポールの学力を色々なところから検証してみます。

シンガポールの学校制度は、何となくわかった。
そうなると、
「シンガポールの学生の学力って世界ではどのくらいなの?」
か知りたくなりませんか?

という事で、世界的な学力テストでシンガポールの学生たちが、
どんな成績を残しているのかご紹介していきます。

まずは、TOEFL:
アジアにおいて、最高スコアのシンガポール

トーフルスコア2014年:アジア上位5か国
国名 リーディング リスニング スピーキング ライティング 合計点
1 シンガポール 24 25 24 25 98
2 インド 22 23 23 23 91
3 パキスタン 21 22 24 23 90
4
フィリピン 21 22 24 22 89
マレーシア 22 22 21 23 89
6
スリランカ 20 21 22 21 84
韓国 22 21 20 21 84
インドネシア 21 21 21 21 84
バングラディッシュ 20 21 21 22 84

トーフルって何?という方は下記をご査収下さい。

トーフル(TOEFL=Test of English as a Foreign Language)は、アメリカのETS=Educational Testing Serviceが主催している、英語圏の高等教育機関に入学を希望する学生の為の英語のテスト。外国語としての英語力を判定する際に用いられます。

日本ではフィリピン=英語ができる国という認識が広まっているようですが、
TOEFLに関しては、ちょっと異なる結果が出ています。

シンガポールは全ての項目において1位です。
インドやパキスタンは元の英国統治領だったので、
一応英語は公用語ですが、やはりきちんとした英語となると、
教育の差が出てくるのでしょうか?

意外だったのは韓国とインドネシア。
以前は日本と並んで英語が不得意だった韓国。
上位に食い込んで来ています。
どちらの国も語学教育に熱心という事でしょうか?

さて、ここでワーストのランキングもご紹介いたします。

トーフルスコア2014年:アジア下位5か国
国名 リーディング リスニング スピーキング ライティング 合計点
1 ラオス 13 15 18 18 64
2
カンボジア 15 16 19 19 69
アフガニスタン 14 16 21 18 69
4 日本 18 17 17 18 70
5 タジキスタン 15 17 20 18 71
6 モンゴル 17 18 19 18 72

なんと日本は下から4番目!
しかも日本より下位の3国は、アジアの中でも特に発展が遅れている国ですから、
先進国の日本が下から4番目というのは、とんでもなく悪い結果だと思います。

ちなみにスピーキング17点というのはテスト実施国170か国の中での最低点。
由々しきことですね。
大丈夫か日本!

英語以外のテストでは、シンガポールはどうなんでしょう?
-PISA

英語のテスト(しかも母国語を英語としない生徒を対象としたテスト)でシンガポールの学生が成績が良いのは、公用語として英語が使われているからでしょう?
とお考えの方も多いと思います。

確かにシンガポールでは、日本とは比較にならないほど英語を使う機会は多いです。
学校では他の語学の勉強を除いて、ほぼ100%英語で授業が行われるシンガポールですから、英語の成績が良くて当たり前と思われるかもしれません。

という事で、英語以外のシンガポールの学生の学力をもっとわかって頂く為に、
PISAのスコアを見ていきましょう。

PISAとは、OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に3年ごとに実施される15歳児の学習到達度調査の事です。
主に読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーなどを測定します。
日本でよく行われている学力テストとは異なり、生きていくうえで必要な能力を調査することに比重がおかれています。
暗記ではなかなか解けない問題ばかりです。

2012年(こちらの資料が現在は最新となっています)の調査で、
シンガポールは国としてはランキング1位となりました。
しかし、上海の数学の613点というのは、すごいスコアですね。

中国の都市部が、いかに教育に力を入れているかが、分かります。

こちらのテストは、それぞれの国の言葉で行われますが、
シンガポールでは英語の問題が使用されます。

この結果では日本は5位と、まずまずの成績。という事は現在日本の教育では、
英語がネックなのかもしれません。頑張れニッポン!

国(都市)名 数学 科学 読解力 合計点
1 上海(中国) 613 580 570 1763
2 シンガポール 573 551 542 1666
3 香港(中国) 561 555 545 1661
4 韓国 554 538 536 1628
5 日本 536 547 538 1621
6 台湾 560 523 523 1606
7 フィンランド 519 545 524 1588
8 エストニア 521 541 516 1578
9 リヒテンシュタイン 535 525 516 1576
10 マカオ(中国) 538 521 509 1568

PISAに関しては、
シンガポールは何故、国際学習到達度調査で世界一位を独占できたのでしょうか?
でもご紹介しています。
ちなみに2016年発表の調査、でシンガポールは3科目ともトップになりました。

こちらは、OECDの発表です。シンガポールが1位 - OECD PISA学力調査

最後にIBDP (国際バカロレア: ディプロマ)の最新結果です。

IBDPとは、ジュネーブに本部を置く教育団体「国際バカロレア機構(IBO=International Baccalaureate Organization)が提供している3つのプログラムのうち、16歳から19歳の生徒を対象にした2年間のディプロマコースを指します。

コース修了時の卒業試験に合格すれば、
国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能となります。

これまで日本で知名度の低かったIBが、にわかに注目を浴びてきています。

それは、「2018年までには国際バカロレアDP認定校を200校まで増やす」という目標を安倍内閣が明記したからです。
現在26校しかないIB校(しかも、この計画を明言した2013年から増えていないし…)を200校まで増やすとは、とんでもなく、大きな目標を掲げたものです。
後2年で200校!しかも協会に日本語DPの導入を認めさせてしまったのですから…国際競争力を向上させるための人材育成が重要と思うなら、なぜそこで日本語のDPなのか、それは大きな謎です。

日本に関してのIB情報はこれくらいにして、本題に戻りましょう。

シンガポールのIB(DP)認定校は現在21校。
そのうちインターナショナルスクールが14校ですから、
シンガポール人が通う学校は7校という事になります。
*シンガポール人は、国内のインターナショナルスクールに通うことはできません。

2016年1月に、2015年に行われた試験の結果が発表されました。

シンガポールでは、今回1633人が試験を受けました。
合格率は97.7%そのうち48人が満点でした。

こんな風に言うと、IBDPの試験が簡単のように思われてしまいますが、
そんな事はありません。
この試験に合格するのは本当に難しいことなのです。

もちろんこの合格率は、アジアではトップです。
更にすごいのは、世界中でこの試験を受けた人の総数は、11,763人。
満点をとった生徒の総数は81人。そのうちシンガポール人が48人を占めています。
なんと、半数以上がシンガポールの学生です。
これで、どれほどシンガポール人が成績優秀なのかがわかりますよね。

下記の表をご覧ください。

国名 受験者数 合格率 満点獲得者数 平均点数
シンガポール 1640 97.70% 48 38.50
オーストラリア 2160 92.03% 30 34.57
ニュージーランド 340 93.17% 1 34.58

因みに、オーストラリアもニュージーランドも母国語が英語の国です。

公用語とは言え、母国語でない言語でこの点数。すごいと思いませんか?

世界の平均点は30.98点。
シンガポールの平均点の高さがお分かりいただけると思います。

シンガポールの学力のレベル、お分かり頂けましたでしょうか?
学力って、生まれ持った素質よりも、
それを伸ばす環境が実は結構大事なのではないかと、
現在のシンガポールと日本を見ていて感じます。

確かに学力だけが全てではありませんが、
教育に熱心な国は国自体が発展しているのも事実です。

シンガポールの教育にご興味のある方は、下記のブログも併せてご覧ください!
▶ 2016年夏季ーシンガポールのインターナショナルスクール、ホリデークラス情報です

▶ シンガポールでの学校探し-インターナショナル・スクール (2016年度版)


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