世界から注目を浴びている、シンガポール式算数をご紹介します。

前回のブログ「シンガポールは何故、国際学習到達度調査で世界一位を独占できたのでしょうか?」でご紹介しきれなかった、シンガポールの教育システム。

今回は世界中でそのユニークさと効果で注目を浴びている、
シンガポール式算数をご紹介いたします。

シンガポール式算数については、昨年末フジテレビ系の「めざましどようび」という番組で、
シンガポールに移住されている、田嶋 麻里江さんがお書きになった
「世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル」という本が紹介され、
その後各書店で売り切れ状態になるなどの現象がおきたようです。

日本では、あまりなじみのないシンガポール式算数ですが、
実はシンガポールの算数の教え方については、
イギリスやアメリカなどの教育機関も注目をしているのです。

例えばイギリス。

少し前になりますが、2年前のインデペンデント紙電子版には、
このような記事が…
Singapore-style teaching helps solve problem of maths failure, says new research
算数で落ちこぼれた子供達を、シンガポール式算数で救う事が出来るのか?というテーマですね。

アメリカでは、AFT(アメリカ教員連盟)の会長がシンガポールの公立校を訪れ、
その教育レベルの高さの秘密について語っています。

ビデオは英語ですが、
言葉がわからなくても教室での教え方が伝わってくるので、
是非ご覧ください。

目次

なぜ先進国で、シンガポール式算数が注目されているのか?

今回のPISAの結果を見ても、イギリスやアメリカの子供たちの学力の低さが目立ちます。
これらの国では、私立や有名校に通い超難関大学を目指す学生がいる一方、
一般の公立校では学力の低下が激しいのだと思います。

これは、日本においても決して他人事とは言えない現象です。

発展途上国の場合、貧しかったシンガポールがそうだったように、
政府は国家の発展の為、教育の大切さという事を、しっかりと理解し、
子供たちに良い教育をと願い、教育制度の整備に力を注ぎます。

また、良い教育を受ける=高収入を得る手段という考えもあり、
親は子供たちの教育に益々熱心になります。

ただ、衣食住が満ち足りた先進国になり、
普通に教育を受けることができる立場になると、
人間とは勝手なもので、
それほど教育の大切さを感じなくなってしまうのです。

イギリスやアメリカの公立校が抱えている問題は、
正に豊かになってしまった国の
悩める側面を反映しているのではないでしょうか。

ただ、そんな状態を決して各国の教育機関は良かれとは思っていません。

特殊な教材や教え方を必要とせずに、
しかもしっかりと結果を残す教育方法として、
シンガポールの算数モデルは最適です。

イギリスやアメリカなどの国で取り上げられるようになったのは、
そんな理由が大きいのではないでしょうか?

実際シンガポールの小学校では、
どんな授業をしているのでしょう?

それでは、実際に使っている問題をご紹介いたしましょう。

シンガポールの小学校の算数問題

こちらは、シンガポールの公立の小学校で実際に使用されている問題です。
市販のドリルではなく、この学校の独自の問題集です。

学校名と生徒の名前は伏せてご紹介させて頂いています。

シンガポールの小学校1年生の問題です。

最初に驚くのは、これは小学校1年の入学2か月目の問題という事です。
*シンガポールでは、新学期が始まるのは1月。
そして日の書き方はイギリスと同じ
日・月・年です。
この問題は、2月の6日に行われたという事です。

さて、問題の解説に入ります。

「ナンバーボンドに記入しましょう。」と書かれています。
ナンバーボンドというのは、こちらもシンガポール独特の教え方です。

二つの丸の合計が右に〇の中に入る事があったり、引き算や足し算にも応用されます。

今回は、左の図からわかるように3冊の本と2冊の本を合計するという足し算で使われています。

日本だったら、こんな教え方をせずに
単に3+2=〇みたいにして、答えを求めますよね。

こうなると、数式ではわかっているつもりでも、
実際には、2と3を足すという事がどういう事なのか理解していない場合が多いのです。
数の関係がしっかり理解できないと、二ケタの計算の時につまずく確率が多くなります。

この問題の良いところは、
1.それぞれの具体物の数を自分で数える
2.そして、右側の丸に当てはまる数を入れていく
というステップを踏んで、
2冊と3冊を足したら5冊になるのだという事を学んでいくのです。

ページの2枚目はそれを更に発展させています。

問題は、「足したら10になる数のペアを見つけましょう。
それぞれ足したら10になる組み合わせを同じ色で塗りましょう。」です。

これは、10になる組み合わせを自分で探し出さなくてはなりません。
足して〇〇になる組み合わせを覚える事で、数の仕組みを理解していきます。

と同時に問題を理解する力も必要です。

日本の算数の問題は、このくらいの年齢では、文章はあまり出てきませんよね。
出てきても、「足したらいくつになるでしょう。」のように、
すでに回答の50%ぐらいは問題に含まれているような書き方をします。

シンガポールの場合の質問は、
ページ1の「当てはまる数字を入れよ」でも分かるように、
これは足し算?引き算?のように、
まず子供たちが、その数の関係を導き出さなくてはなりません。

そして次のステップでは、きちんと文章を理解する力も必要となります。

このような問題で小さなころから訓練されている子供たちは、
学年を重ねる事によって、より高度な問題も簡単に解くことができるのです。

ナンバーボンドって一体なに?という方に、
英語ですが、初歩的なナンバーボンドの使い方を説明したビデオがあったので、ご紹介しておきます。

ナンバーボンドの説明。*タイトルにはちゃんとシンガポール算数って入ってますね。

Number bondsで検索すると、本当にいろいろなビデオが出てきます。
しかもシンガポールのビデオ以外もたくさんあります。
これは、世界的にもこの方式が有名な証拠だとおもいます。

今回は、ちょっと変わったシンガポール式算数の問題を取り上げてみました。
日本では、「○○式算数」のようなものが良く取り上げられ、
一体どれが一番良いのだろうと、
選択を迷っているご父兄も多いかと思います。

日本ではあまりなじみのないシンガポール式算数ですが、
この方式で、小さい時に数の関係をしっかり学んでおくと、
絶対に算数が得意になると思います。

算数の苦手なお子様にも、おススメですよ。


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