リモートワークが広まった事により、場所や時間の制約なく働けるようになったためか、コロナ禍以前とは異なった質問を多く頂くようになりました。
今回は、そんな質問にまとめてお答えしたいと思います。
現在のステータスはそのまま、新たな会社を設立し、代表になりたい。
質問内容
現在、シンガポールの会社で駐在員としてお勤めのAさんから頂いた、質問です。
日本でお父様が営んでいる事業を基に、シンガポールでの法人設立を検討中とのことです。
Aさんご自身が現地取締役となり、日本の業務の一部をシンガポールで行っていきたいとのことでした。
日本での売り上げの一部をシンガポールの売り上げとして計上する事により、
日本での節税、そしてシンガポールの低税率の恩恵を享受できるのではと、考えたようです。
この質問から考えられる問題点
これが日本であれば、そして、
Aさんがお勤めをしている会社が、副業を認めているのであれば何も問題はありません。
でも、シンガポールでは、Aさんが現在の状態で法人の代表取締役になることはできません。
なぜなら、EPホルダーは原則として、
EPの発行元である勤め先以外の会社の取締役にはなれないからです。
以前は、A社から申請されたEPを保持している場合、
B社やC社の代表取締役になるために、特に申請や許可は必要ありませんでした。
しかし、現在は*ONE Passホルダー以外が他社の取締役になることは、原則認められていません。
もちろん、SパスホルダーやDPホルダーの場合も同様です。
法人の取締役になること、そしてその法人から給与等の役員報酬を得ることは認められていません。
法人を設立し、日本の事業の一部をシンガポールで請け負いたいのであれば、
Aさんは現在お勤めの会社を辞職し、ご自身で法人を設立する必要があります。
そして、設立した会社の取締役として、改めてEPの申請をしなければなりません。
ONE PassとはOverseas Networks & Expertise Passの略称です。
シンガポールで個人事業主になりたい。
質問内容 2.
世帯主の転勤に伴ってシンガポールに移住された、Bさんの場合
Bさんは、日本で個人事業主として働いていました。
旦那さまのシンガポール転勤に伴い、Bさんもシンガポールへ帯同することになりました。
Bさんが日本で行っていた事業は、オンラインで完結するため、
シンガポールでも、引き続き個人事業主として事業を展開したいと考えています。
この場合、シンガポールでの個人事業主登録は可能でしょうか?
この質問から考えられる問題点
個人事業主登録について
まずは、シンガポールでの個人事業主登録について確認していきましょう。
シンガポールでは、個人事業主登録は法人設立と同様、シンガポール企業会計庁(ACRA)が管轄しています。
ACRAのページで、個人事業主について確認していきます。
シンガポールで個人事業主または合資会社を設立できるのは誰ですか?
*クリックするとACRAのページ(英文)に飛びます。
ACRAでは、個人事業主になれるのは、下記の二つの条件を満たしている人と定義しています。
・少なくとも18歳以上
・シンガポール国民、シンガポール永住権保持者、または資格のあるFIN保有者
FINとは、Foreign Identification Number(外国人識別番号)のことで、
EP(エンプロイメント・パス)、DP(ディペンデントパス)、Sパス、
スチューデントパス等に記載されている番号を指します。
下記の画像(EP)で赤く囲まれた部分に記載されている番号です。
という事は、DPホルダーも個人事業主になることはできそうです。
ただし、”資格のある”という項目が問題になります。
この”資格のある”というのは、どういうことでしょうか?
具体的に、どのような条件を満たしている人を指すのでしょうか?
ACRAのページには、以下のような説明があります。
FIN holders are advised to check with the relevant pass issuing authority (e.g. MOM/ ICA) on their eligibility before registering or taking on an appointment.
これは、FIN保有者が、シンガポールで個人事業主や合資会社を設立する場合、
あるいは会社や組織の役職に就任する前に、該当する発行機関に資格を確認することを勧めているものです。
“資格がある”と認めてくれるか、認めてくれないかは、MOMやICA次第になります。
*EP、DP、SパスはMOM(シンガポール人材開発省)、
スチューデントパスはICA(シンガポール入国管理庁)の管轄です。
かつては、駐在員の配偶者が自宅で習い事教室を開くなどの、小規模なビジネスに関しては、
特別な許可は不要で、比較的簡単に始めることができました。
しかし、現在ではワーキング・パーミットの申請が必要となり、手続きが複雑化しています。
そんな最近の事情を鑑みると、個人事業主の登録も簡単にできるとは考えにくいですね。
シンガポールの法律はめまぐるしく変更されるので、その都度チェックが必要
シンガポールは、経済も政治も発展した都市国家として有名です。
法律もわかりやすく整備されています。
ただ、その法律がめまぐるしく変わる国としても知られています。
シンガポールの法律が頻繁に変更される理由として、以下の3つが考えられます。
- 社会の変化に対応するため
シンガポールは、多民族・多文化国家であり、常に経済成長と社会の変化が続いています。
そのため、法律を常に最新の状況に合わせて変更する必要があります。
- 政府の政策を反映するため
シンガポール政府は、常に国民の福祉や経済の発展を図るために、さまざまな政策を実施しています。
これらの政策を反映するためには、法律を頻繁に変更する必要があるのです。
- 国際的な基準に合わせるため
シンガポールは、国際的な基準に合わせた法律の整備を進めています。
そのため、国際的な基準の変化に合わせて、法律を変更する必要があります。
シンガポールで生活したり、事業を行う際には、
定期的に法律が変更されていないかを、チェックすることが重要になります。
法律のチェックには、必ず一次情報を利用すること
誰でも、簡単に情報発信ができるようになったからか、
ちまたには、間違った情報が氾濫しています。
間違った情報を鵜呑みにして、 法律を誤って理解し、
トラブルに巻き込まれたりする可能性があります。
情報を確認するには、必ず一次情報を利用する事をおすすめします。
一次情報とは、
法律の原文や法律の条文解説書などの、法律に関する直接の情報源です。
例えば、シンガポール政府のウェブサイト上で公開されている、
法律の原文を確認するのがよいでしょう。
今回の場合で言えば、ACRAやMOMのサイトの確認です。
シンガポールの一次情報=英文となるので、少しハードルが高いですが、
現在は、無料の翻訳機能の精度が、ものすごく進化しています。
AIの翻訳機能を駆使しましょう。
一次情報を利用することで、法律の正確な内容を把握することができます。
二次情報の内容には、作成者の解釈や誤解が含まれている可能性が高いです。
また、二次情報は、常に最新の情報を反映しているとは限りません。
特にweb上で簡単に入手できる日本語の情報には、注意が必要です。
今回の情報が、同じような質問を抱えている皆様の、
疑問を解消するお手伝いになればうれしいです。
当社でお手伝いできる事
当社では、2004年からシンガポールでの法人設立や節税移住、
教育移住のお手伝いをさせていただいております。
当社では、日本やその他の国から、節税や教育のためにシンガポールへの移住をご検討の方、
または母子留学をご検討のお母様を対象に、移住や留学に関するご相談や手続きのお手伝いをしております。
具体的には、
- 法人設立に関するサポート全般
- 法人設立後の会計等に関するサポート
- 法人の運営に関するサポート全般
- 移住に関するサポート全般
- 母子留学に関するサポート全般
などです。
大変申し訳ないのですが、上記に当てはまらない方からのお問い合わせには、
お答えできない場合もございます。ご了承ください。