シンガポールに設立した法人は、CRSの影響を受けるのでしょうか?

CRS

2018年から本格的に、シンガポールや日本で実行される予定のCRS(共通報告基準)ですが、
今回は、CRSがシンガポールに設立した法人に及ぼす影響について、
お伝えします。

目次

CRSを簡単にご説明致します

CRSって一体何?という方は、
まず、国税庁のページをご覧ください。

こちらのページにCRSについての情報は、
全て網羅されていると思います。
共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CRSコーナー」)

ちょっと、分かりにくいですか?
では、簡単にご説明致します。

今まで、日本在住の日本人が海外に口座を持っている場合、
日本の税務機関が、その詳細を把握するのは困難でした。

例えば、日本に在住の方が1億円を日本で申告せずに、
シンガポールの金融機関に預けてあるとします。

このような情報を日本の税務当局は、特殊な場合を除き、
ほぼ把握できていません。

本来であれば、海外に資産が5000万円以上ある場合は申告しなければいけないのですが、
きちんと申告していない場合も多く、
現実問題として、日本の税務当局がこの事実を把握するのは困難な状態でした。

ただし、CRSが実行されると、
金融機関はその国に居住していない外国人の口座情報を、
一定の様式に沿って管理し、
定期的に、口座保有者が在住する国の税務当局に報告する義務が発生します。

シンガポールも日本もこのCRSに参加しています。

そうなると、シンガポールに居住していない日本人の口座情報は、
自動的に、日本の税務当局へ報告されることになります。

口座情報の交換は、2018年から実行される予定です。
その準備のため、今年初めからシンガポールでも銀行口座を開設する場合、
居住地の住所証明や、
納税番号(日本のマイナンバー)等を申告する必要が出てきました。

CRSが適用されるのは、個人の口座だけではありません

このCRS、個人の金融資産情報の開示だけに留まらないのです。

シンガポールに設立された法人で、
株主がシンガポール在住でない場合で
且つ一定の条件下の法人は、
個人同様に情報を報告しなければなりません。

情報を報告しなければいけないのは、
事業実態のない資産運用を目的とした法人、
受動的非金融機関事業体(Passive NFE)と判断された法人です。

受動的な事業体とは、
収益の50%以上が配当や利息収入である法人。
あるいは、
法人資産の50%以上が、
投資関連の所得を生み出す為に保有されている法人を指します。

つまり、実際の事業をシンガポールで行わず、
主な活動が配当や利子、ロイヤリティー、賃貸収入、キャピタルゲインなど
の場合、その法人は個人と同様にみなされ、情報が開示されることになります。

もちろん、
その法人の株主や役員の情報も、
居住地の税務当局に通報されます。

日本では、シンガポールに
個人の資産管理会社を作ることを勧めていた業者もあるようなので、
該当する法人も、かなりの数に登るのではないでしょうか?

また、欧米の各金融機関や、会計士事務所が、
PDFにてPassive NFEの概略を提供しているところを見ると、
世界中に該当する法人が、相当数あると予測されます。

CRSがシンガポールの法人設立に及ぼした影響

2018年から実行される、金融口座情報の自動交換の準備の為、
また、テロリズムや国際的なマネロンに対処する為、
ACRA(企業会計規制庁)でも、
シンガポールに非居住の外国人が株主や取締役である法人の設立に際しての
情報収集を行っています。
今までと比べると、申告しなければいけない情報や書類が多くなってきています。

但し、税務上の居住地証明以外は、
個々の自己申告に基づく情報となっており、
証拠となるものを提出する事は、課されていないので、
自己申告が全て正しいという前提で、
情報は収集・保管されている状況です。

もし、シンガポールに設立した法人が、虚偽の申告を行い、
Passive NFEに該当していたことが、明らかになった場合は、
禁固刑も含む、処罰が課せられる事になっていますので、
申告は慎重に行って下さい。

法人の銀行口座開設の手続きが、煩雑になっている

CRSが及ぼした影響の1つに、法人の銀行口座の開設があります。

法人の銀行口座開設の手続きが、以前にもまして煩雑、
且つ難しくなっている様な印象を受けます。

CRSだけでなく、お隣の国の首相が
マネロンのための法人口座を開設していた事実もあり、
シンガポールの各銀行は、
マネロンに対してとても神経質になっています。

その為、シンガポールで法人口座を設立するためには、
実際にシンガポールで事業を行っている事実を証明する
書類等を提出することを求められる場合があります。

ただ、新規事業を立ち上げた場合、
そのような書類を提出することは困難な為、
代替のなる書類で承認される場合が多いですが、
各銀行の判断によることが多く、口座開設が出来るかどうかは
ケースバイケースになっています。

シンガポールへの移住をお考えで、
就労許可の事を心配されている方が多いのですが、
法人の銀行口座開設というハードルの方がかなり高いという事、
ご了承下さい。

CRSについてのさらなる情報が必要な方は…

CRSについて、もっと詳しくご自身で確認されたい方は、
OECDの発行しているハンドブックをご参考下さい。
The CRS Implementation Handbook」(英文です)

既にシンガポールに個人の銀行口座をお持ちの方で、CRSのことが気になる方は、
CRS(共通報告基準)実行されると、シンガポールにある口座はどうなるの?のブログもあわせてご覧ください。

シンガポールの法人設立に関して、ご質問のある方は、
初回の簡易相談は無料で行っておりますので、
お気軽に当社へお問い合わせください。

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