今回は、前回のブログでご説明することを、
お約束していた”アントレ・パス”について、のお話です。
シンガポールで外国人が働こうとする場合は、就労許可が必要となります。
”アントレ・パス”は、就労許可の中の一つの種類なのですが、
これが一般の人には、なかなか分かりにくいパスなのです。
シンガポール人のほとんどは、その存在すら知らないかもしれません。
アントレパス以外のシンガポールのビザの種類に関しては、
シンガポールの就労ビザ、EPとSパスの違いとは?のブログをご覧ください。
そもそも、”アントレ・パス”とはどんなパスなのでしょう?
アントレ・パスの歴史
はじめに、”アントレ・パス”の歴史と、その背景についてお話しさせて頂きます。
この、”アントレ・パス”というスキームができたのは、2004年。
今から18年前の事です。
それまでは、就労許可と言えば、EP(の中にカテゴリーが数種類)と現場作業員やメイドさんなどに与えられる、ワークパーミットの二つしかありませんでした。
2004年と言えば、初代首相の長男である、リー・シェンロン氏が第3代首相に就任した年です。
ちなみに、当社YHF PTE.LTD.創設の年でもあります。
こちらのアントレパス。
2009年に改訂が行われ、更に2013年にも再び改定がなされています。
このスキームができた頃シンガポールは、現在のように世界からそれほど注目を浴びている国ではありませんでした。
政府は、国に貢献してくれる、優秀な外国人を必要としていました。
シンガポールでの起業を希望している資金に乏しく、また学歴もない外国人の起業をサポートするためにこのスキームは作られました。
通常のEPの申請は現在と比べて、駐在員の交代要員以外では、学歴がとても重視されていました。
しかし、実際にアントレパスを取得する人の間には、ビザの取得だけを目的としている人も多く存在し、
政府の意図とかけ離れていることが分かりました。
2009年に改訂されたスキームでは、
更新時には
・1年以内に現地フルタイム社員を2名以上雇用する事。
・年間の会社の支出が10万ドル以上ある事
などの条件が加わりました。
さらに、その後の更新では、更なるフルタイムの従業員の増員。
そして、支出の増額が課せられます。
本当にシンガポールで事業を行う人以外は、
たとえ初年度パスを取得できても、更新は到底無理な条件が多く追加されたのです。
実際にアントレパスでEPを取得しても、更新ができない人が多くなりました。
そうなると、一体このアントレパスというのは、何のために存在しているのだと言うことになり、
更に2013年に再び、大きな改正が行われる事になりました。
こちらが現在のアントレパス取得の条件です。
2013年度の改正では、今までは名ばかりだったアントレパスが本当の意味でのアントレパスとなりました。
どういう意味かと言いますと、下記の条項が新たに加わったのです。
アントレパスを申請する人は、
下記のうちの一つの条件を必ずクリアしなければいけません。
Your company receives funding or investment from a venture capitalist (VC) or business angel who is accredited by a Singapore Government agency.
- シンガポール政府から、認定されたベンチャーキャピタルあるいは、
ビジネスエンジェルから資金調達を行う事。最低額はS$100,000 (約1000万円)
*現在では、この条件は下記のように変更されています。(2022年12月現在)
The registered company raised funding of at least $100,000 from a government investment vehicle, venture capitalist (VC) or business angel that is recognised by a Singapore Government agency.
- (アントレパスを申請する)登録企業が、シンガポール政府機関によって認定された政府系投資機関、ベンチャーキャピタル(VC)、ビジネスエンジェルから10万ドル以上の資金を調達した場合。
下記の二つが残りの条件です。
Your company holds an intellectual property (IP) that is registered with anapproved national IP institution.
- (アントレパスを申請する企業は)世界IP協会に登録、承認されている、知的資産を保有している事。
こちらは、無くなり、代わりに下記の条件が加わりました。
You have significant business experience or network and promising entrepreneurial track record of starting highly-scalable businesses and want to start and operate an innovative tech or venture-backed business in Singapore.
- シンガポールで革新的な技術系ビジネスやベンチャービジネスを立ち上げ、運営したいと考えている、ビジネス経験やネットワークが豊富で、拡張性の高いビジネスを立ち上げた有望な起業家である方。
Your company is an incubatee at a Singapore Government-supported incubator.
こちらの条件は、下記の表現へと変更されています。
The registered company is an existing incubatee at an incubator or accelerator in Singapore that is recognised by the Government.
- 登録企業は、シンガポール政府公認のインキュベータまたはアクセラレータの既存インキュベータである。
引用:MOM Eligibility for EntrePassより。
2013年の改訂でかなりハードルが高くなったのですが、現在は本当の意味でのアントレプレナーであり、将来的に事業が拡大する可能性があれば、申請は通りそうな気もします。
シンガポールでは、法律が改正されることが頻繁にあります。
無くなってしまう法律だって、結構あります。
アントレパスというのは、政府にとっては、残しておきたいパスだったのでしょう。
でも、申請条件をがらりと変更してしまいました。
すごく分かり易いというか、シンガポール政府の特徴がとてもよく出ている事例だと思います。
という事で、
本来の意味であるアントレプレナーシップをお持ちの方意外には、
縁のないパスという事がお分かりいただけましたでしょうか?
節税や資産保全のためにシンガポール移住をお考えであれば、
ご自身で法人を設立し、そこから就労パス(EP)の申請をすることをオススメ致します。
当社ではシンガポールヘ進出される企業の皆様、
また移住をお考えの皆様のサポートをさせて頂いております。
当地での移住をご検討中の方は、
シンガポール移住サーポートのページを
そして、会社設立等については、